人生はおもしろい事柄に満ちています。日々の気づきを日記にしたためます。
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「役員室午後三時」
「役員室午後三時」(城山三郎)−リーダーに必要なもの

 トップに立つ者の最も重要な役割の一つは、「組織が進むべき方向を力強く指し示す」ことではないだろうか。日本最大の紡績会社、華王紡のワンマン社長・藤堂は、長い任期を通し、この点において比類なく優秀なリーダーであった。しかし加齢とともに、彼の下す判断は、トップとしての冷静なそれではなく、彼個人の感傷に流されたものとなっていく。
 その一例が、定年退職制の廃止。藤堂がこの英断(?)を下した直後は、彼の社内での人気は急上昇、対外的にも時の人となり、藤堂は束の間の勝利感に酔う。高齢・高給の従業員を長期に雇用することは、会社にとっては実質損でしかないのだが、彼はそれに気づかない。
 一方、藤堂の信頼を得、その腹心として勢力を拡大し、しまいには藤堂を失墜させて自ら社長の座に就く矢吹の行動は、一貫して沈着冷静である。藤堂が社長として何をやっても、どこか自己満足の感を漂わせてしまうのに対し、矢吹は、社の内外から衆知を集め、報・連・相をぬかりなく行い、客観的なデータを揃えた上で、あらゆる方針を打ち出す人である。形の上では主殺しだが、矢吹は己の欲得から社長の椅子を願い、計画を練ったのではない。彼としては、あくまでも成り行きなのである。
 リーダーとして、どうすれば組織を正しく、力強く導けるのか。一つだけ言えるのは、私心に影響されないことではないかと思う。「組織のためになる」選択が、「自分個人にとっては苦痛」な選択の場合もあるかもしれない。大組織のリーダーであるからには、常に「組織のためになる」選択肢を引き受ける、真の雅量が欲しい。本作品においては、矢吹の勝利。
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